キャンプの可能性【1】/20周年記念シンポジウム報告

キャンプの可能性【1】 ~JONシンポジウムから考えたこと~

■「これからのアウトドアを考える」
JON(日本アウトドアネットワーク)という組織をご存じでしょうか。アウトドアをキーワードとした活動をしている団体の主宰者たちが主として集まっているネットワーク団体です。NPOなどの法人資格もなく、全くの任意団体として200名近い会員がいます。そのJONが今年20周年を迎えて、「これからのOUTDOORを考える」と銘打った記念シンポジウムを開催しました。シンポジウムは二部構成でおこなわれ第一部は基調講演として日本体育大学の野井真吾先生による「心配される子どものからだと心の現状とアウトドア活動への期待」第二部はJONのメンバー6人によるフィッシュボールディスカッションでした。今回は二部のディスカッション「これからのアウトドアを考える」をフロアで聞いていた者として考えたことを書きたいとおもいます。
6人のパネラーそれぞれの自己紹介から始まりましたが、此処では割愛します。なぜならこの稿でぼくが考えてみたいと思ったことはディスカッションの内容ではないからです。ディスカッションそのものは6人のパネラーそれぞれの立場から発言がありましたがほとんど議論にならずフロアからも話題になるような発言はありませんでした。互いに何を持って「これから」の端緒にしていいのか戸惑っていたようにさえ見受けられました。

■「金持ち父さんと貧乏父さん」
さて、本題に入ります。実はこのシンポジウムが始まる前から、開催を呼びかけるチラシのある表現が気になっていました。それはパネラー6人を紹介した欄の下に「キーワード」とあり「ビジネス、仕事として、独立、就職活動、ボランティア、地域活性、日本を元気にする、起業、働くと言うこと、自然学校,NPO」と書かれてあったことです。これらのキーワードからこのディスカッションはもしかすると「アウトドアをこれからビジネスとしてやっていって将来的に成り立っていくのか」ということを確認しつつ話してみたい、という意図が隠されているのでは、と思えたのです。しかし、「ビジネスとしてのアウトドアの将来」などと掲げてしまってはアウトドアに関わるぼくたち貧乏人の話題は、どうやって儲けようか、なにかうまい儲け口でもあるかい、などという非常に下世話な話題に終始してしまうのではないかと危惧していました。さらにその様な話題で進めていって本当にいいのだろうか、という疑問も持っていました。ですからきっとパネラー達もそんな話題は避けたかったに違いないのです。その意味ではホッとしたのですが、だから終始中途半端でした。などと言ったら失礼でしょうか。
でも、敢えて言うならこの中途半端さが今のアウトドアの世界なのであって現実的には何を「これから」の話題としていいのか定まらないのかも知れません。更に言うならば今日の日本のアウトドアの世界はロバート・キヨサキ氏の著書名のような「貧乏父さん」と「金持ち父さん」どちらを思考(志向)するかを正面切って議論しあえない世界でもあると言うことに他なりません。

■揺蕩う(たゆたう)ことの心地よさ
「アウトドアは今日すでにビジネスとして成立しています」その様に言いますと「違和感がある」とする人たちが少なからずいることを承知しています。実はぼくもその一人なのですが、仕事とする以上生きて行かなくてはなりません。ですが、ぼく自身はこの世界で生計を立てつつも何時までもこの曖昧さの中で揺蕩うている事が心地よいのです。何故なのでしょう。ぼくはこう思っています。「アウトドアの仕事を選んだ以上金儲けや名誉には背を向けよう。ぼくたちの活動の先は常に子どもたちなのだから」と。(ちょっとカッコつけすぎですかね。恥ずかしい)
アウトドアの世界には様々な分野があることはご存じのとおりです。ですから文字通りもの凄く間口は広いのです。が、どんな分野であろうと一度一つの門から入ってしまったら、その中はもの凄く狭い世界、コアな世界であると言うことを知らねばなりません。そして今はその小さく狭い世界(-分野)をそれぞれ素晴らしい世界にするために個々人が懸命に努力をしている時です。その努力の成果が今やっと見えつつあります。小さな世界の住人同士が個性的に、それぞれのネットワークを広げています。ですから、ぼくとしては各自で糊口を凌ぐ策を講じつつ、その上で束となってアウトドアの世界そのものをビジネスとして拡大する事に死力を尽くして生きて行こうではありませんか。ともっともっと大勢の人たちに呼びかけたい気持ちです。今は自らの努力を互いに認め合いながら束になるのであって、他者から束ねられてはなりません。そうですお金儲けというものからは・・・・。それだけにアウトドアの世界はまだまだ自由に豊かに個性を伸ばして行ける季節なのではないかと思っています。

■「これから」はこれから
最後になりますがお断りしておかなければならないことがありました。実はぼく自身がJONの初期からのメンバーであり、現在も運営委員ですので今回のシンポジウムの主催者の一人でもあることです。ですから敢えて言います。「だから今JONなのです」と。しかし、その上で思うのです。6人のパネラー一人ひとりの「何のこれから」を語らねばならないか。が、もう少し鮮明になった頃に再度シンポジウムをしてみたいものです。主催者側の一人として褒められた結論はないのですが、互いに「これから」を語る立場にまだまだ達していないのだな、という事が確認できたシンポジウムでした。

P-MAC野外教育研究センター 代表:石井英行                                       <Cat Letter90号、NPO法人東京都キャンプ協会、2013年4月>より転載