第10回「今、感じること」

一村小百合氏 (関西福祉科学大学 福祉実習相談室)

長年携わった野外活動の仕事を辞めたのは昨年春のこと。

年を重ねるごとに、どんどん好きになっていくこの世界に、我ながら誇りと自信を持っていた。しかし、その反面こだわりだけが大きくなっていき、周囲に求めるものも大きくなっていった。辞めた頃は、「野外活動から引退や、そんなに執着もないし、また好きなこと見つけてみよう!」と軽い気持ちでいた。でも、うん十年の活動をそんなに軽くは切り離せなかった。

ご縁があり、昨年から大学という世界に身をおくことになったが、1ヶ月もたたないうちに身体がついていかなくなった。窮屈な部屋の中、閉じ込められたかのように感じ、落ち着きなく、本来の仕事が手につかない状態になっていった。自分でも無意識に窓をぼーっと眺めては、新人リーダー (大学生リーダー) の入団式のことや研修のことを考えている。「みんな、元気かな?」「そろそろ夏のキャンプの準備やな~」とか・・・。「こんなはずじゃない!」と何度も自分に言い聞かせていた。

新緑が色づき始め、木々の移り変わりを目で見て、初夏の心地よい風を肌で感じた。夕焼けの煌々と輝いている色が何とも綺麗で、思わず顔が微笑んでいた。今までこんなに自然の表情をゆったりと感じていたかな?と、ふと思った。

仕事として一年のほとんどを野外で過ごし、自然の中で、自然に一番触れていると自負していたが、野外にはいるものの自然とむきあっていたのか、と考えてしまう。木々の移り変わり、緑のにおい、風の音、鳥や虫の鳴き声などなど、当たり前のように感じ、聞いてはいたけれど・・・。

リーダーたちを育て、子どもたちに実体験を味わってもらおうと、必死でプログラムに追われ、時間に追われながら、感じているつもりでいた。でも、つもりだけだったような気がする。

確かに、そんな中での自然との対話が私に多くのものを与えてくれた。喜怒哀楽を、それこそ自然に表現できたのも (少々表現しすぎたのかもしれないが) 野外活動に仕事として携わり、自分がそこにいたからこそ、得られた財産である。そうそう、話はそれるが最近自分をうまく表現できない学生が何とも多いことか・・・?

今まで、目の前にあるものを当たり前のように受け止めていたが、でもそれは当たり前のことではなく、かけがえのない得難いものであったことに改めて気がついた。仕事としての立場から離れたことで、自分に対してもそうだが、周りの環境を含め前より多くのことを考えるようになった。自然の見方、関わり方、人への接し方、優しさなどなど。以前より数倍もアウトドアが好きになったし、他人のことや自分のことも好きになった。やっぱり、野外で、自然の中でいることが、自分らしさをアピールできる、ということも・・・。

今、大学での授業を時折野外で行っている。他の先生方からは顰蹙状態であるが、学生たちにとっても、自分を発見しそして表現するために、また他人を理解するためにも、野外の、自然の力はどんな教示よりも大きい。何より私自身が落ち着くことが一番ではあるのだが・・・。

仕事としては離れてしまったが、これからはほどほどに力を入れて、自分にあった野外活動のあり方や楽しみ方を見つけていこうと思っている。まだまだ気づいていない自分発見のためにJONのみなさんとも末永いおつきあいをお願いしたい。

今年は、気が狂う前に、と思い、幼児から小学生までが月一回集まる定例会に参加したり、夏は子どもたちとキャンプへも行った。たった一年のブランクなのに、体力的にかなり参ったことがショックだったが、まだまだ負けない気持ち半分、そして新たな発見のために多くの自然を実感するために出かけていこうと思っている。