第71回「サンカヨウ」

《サンカヨウ メギ科》

夏に向かう頃の山道で出会う花です。6月の末ころ、高山でつい最近まで雪があったのではないかと思われるところで見かけます。そして花期の短い花です。ここ何年かは丁度よい季節に出会ったことがありませんでした。ポジフィルムでは何枚も撮ってあるのですが、デジタルの写真がありませんでした。今年久しぶりに出会って撮ることが出来ました。だからやっと登場と言ったところでしょうか。ぼくの好きな花の一つなので早い内に登場させたかったのですが、なかなか叶いませんでした。

お客さんから「好きな花は何ですか」と訪ねられることはいつものことですが、答えるのには少々苦労しています。と言いますのは「好きだ」と言って告げた花が質問した方に分からないことがしばしばあるのです。この仕事を始めた頃は余り気にもしていなかったのですが、長年やっていますとその方の反応で、ご存じではないな。というのが分かってきます。殆どのお客さんがぼくより年長の方ですから知らない花を並べることは失礼だ。と思うようになりました。しかし、だからといって適当な花を並べて偽ることでお茶を濁すのはもっと失礼です。そんなとき助けてくれるのがこのサンカヨウです。ぼくはあまり大きな花が好みではなく(いや花ならばどんな花でも好きなのですが)、どちらかというと小さな花が好きなのです。目立たない地味な花です。結果的に余り知られていない花。と言うことになります。ところがこのサンカヨウは好きな花の中では例外的に大きな花です。そして多くの方がご存じで「ああ、大きいけれど清楚な花ですね」と言葉を返して下さるのでホッとします。

この頃は少しずるくなって、花の詳しそうな方にはマニアックな小さな花を、どちらかというと初心者かなと思われる方にはこのサンカヨウを先に告げてから小さな花の名を言うようにしています。

P-MAC 野外教育センター 石井英行