第67回「ヨゴレネコノメソウ」

《ヨゴレネコノメソウ ユキノシタ科》

ポピュラーな花を。と心がけていますが春の早い内はどうしても馴染みのない花になってしまいがちです。けれども花好きにとってはとてもポピュラーな花で、春になるのを待ちこがれて見にゆく人も多いのです。今年もネコノメソウの咲く季節となりました。

でも、花好きの人の中でも、「ネコノメソウはどうも」と言って敬遠する人が多いのも事実です。何故かというと、同定がややこしくてなかなか覚えきれないからなのです。ざっと数えてみてもネコノメソウと名の付く花が30種近くあるのです。だから、ぼくもそんなに得意にほいほいと同定は出来ないのですが、何故かこの花の形が好きでしかたがありません。

何故って、この花、なんとなく自由奔放に咲いていると思いませんか。もちろん定まった形なのですが、花の形としてはあまり整っていないように思えるのです。人はその事を美しくない。と言いますが、そんなことはありません。整っていないから美しくないなんて。美に対する偏見です。こんな事で熱くなる必要もないのですが、よくいるんです。美しくない花なら踏んづけて歩いても平気、と言う人が。すこし湿っぽい山道の道ばたに咲くものですから、靴が汚れていやだと言う人が踏んづけるんです。靴は洗えば元通りになりますが、踏まれた花は元通りにはなりません。どうか、足早にやってくる春の使者であるネコノメソウの仲間たちをかわいがってやって下さい。

ヨゴレネコノメソウにそっくりなイワボタンというのがあります。山道で聞いていると時々間違って同定している人を見かけます。イワボタンとヨゴレネコノメソウの決定的な違いは、葯の色にあります。この様に濃い紫というかしっかりと色づいているのがヨゴレネコノメソウです。「ヨゴレ」なんてひどい名前が付いていますが、けして汚れているわけではありません。この様に美しく咲いております。

P-MAC 野外教育センター 石井英行