第60回「ミスミソウ」

《ミスミソウ キンポウゲ科》

三角草と漢字表記する。写真でも分かるように葉の形から命名に間違えはないだろう。春の早い時期、まだ山にはたっぷり雪が残っている頃、里山の近くに咲く。色の変化が多く白色、淡紅色、淡紫色、淡青紫色と手元の図鑑にある。写真の花はいったい何色だろう、淡い紫とも、淡い紅色ともとれる。色で判断は出来ないが幸いなことに葉の形が余りにも特徴的なので迷うことはない。ところが困ったことにオオミスミソウという種類があり日本海側に咲く。実はこの写真の花は新潟県で撮っている。しかし、オオミスミソウの方は葉が10~15cmもあるのでこれもなんとか切り抜けて同定ができる。

が、しかしこのミスミソウにはもう一つ難題がある。スハマソウという酷似した花があるからだ。州浜草と漢字表記されるので海の近くにあることがわかる。しかも新潟県に産する花は色の変化が多いとのことだ。手掛かりは葉の先端がミスミソウでは尖り、スハマソウはとがらないということなのだが、こういう違いは時にどちらか区別の付かないものが必ず出てくるので困ることがある。写真は明らかに尖っているのでミスミソウである。

ぼくがこの花を初めてみたのはもうかれこれ40年ほど前である。それは5月のゴールデンウイークにスキーツアーに出かけるようになった頃だ。5月の山はかなり気まぐれで里は晴れていても山頂付近は大荒れ、なんていう日がけっこうある。そんな時はスキーを諦めて近くの里山へ出かけることが多い。その山で見かけたのだ。5月の連休は毎年殆ど同じ山を滑るので、ミスミソウはぼくにとっては出会いたくない花なのだ。ツアーに出られなければしかたなく出かけて行く山に咲くのでそう言うことになる。花の好きな男に出会いたくない花があるなんて何だか矛盾しているが、ゴールデンウイークは一年に一回しかないのだからしかたがない。写真を撮ったこの日、この年は、山の雪が少なく、スキーを担いだまま3時間も林道を歩かされてしまった明くる日だったように記憶する。別のルートから山へ入るつもりだったがさすがに疲れてしまったのと、そのコースも同じように長い林道歩きをさせられるとの情報だったのでツアーを諦めた日であった。

P-MAC 野外教育センター 石井英行