第58回「チングルマ」

《チングルマ バラ科》

山には花が無くなってくる頃になりました。それでも低山や里山に行けばまだまだ10種類くらいは見られるとおもうのですが2,000mを越えるとさすがに枯れ野原です。そんな時この欄も季節に合わせるのが難しくなりますので、とらわれずに思い切って夏の花にしました。

チングルマ。漢字表記は稚児車です。ちごくるまが訛ったのでしょう。しかしぼくの感性ではこの花が何故稚児なのか見当が付きません。なので勝手な想像をさせてもらいます。曰く、稚児が乗るような車。祭りで使われる山車でしょうか、乳母車でしょうか、あるいは高貴な幼子の乗る牛車あたりを稚児車と言ったのでしょうか。いずれにしてもこの花「花の絵を描いて」と注文されたら絵心のない人にだって描けそうな形をしていると思いませんか。だから稚児の乗る車に、誰でも描けて飾り付けされた作り物を作れた花というとことから名付けられたのではないかと思えてならないのです。いかがでしょう。また果実が髭のようになって丸まるので稚児行列の持ち物みたいな気もします。

息子が小さい頃、山に連れて行きましたら、すぐにこの花の名前を覚えました。彼は「ちんちんぐるま」といっていましたから「ちんちん」というところが覚えやすかったようです。今は一緒に山へ行くこともなくなりましたので果たしてこの花の名前を覚えているかどうか分かりません。子どもたちにはなかなか花の名前を覚えたり興味を持って貰うことが難しいのですが、こんな名前の花があると案外楽しく受け取って貰えそうです。ちんちんばかりでは仕方がありませんが。

花のことをすこし触れます。実はこの花、「草」ではなく「木」です。高山にはこの様な草なのか木なのか見分けの付きにくい植物が多々ありますが、秋になると紅葉をします。そうすると木なのだなあ。とその姿に納得します。なかなか綺麗なのですが一般的にはあまり見る機会はありませんね。

P-MAC 野外教育センター 石井英行