第49回「シバヤナギ」

《シバヤナギ ヤナギ科》

植物の好きな人たちは、それぞれに得意な分野があってそれぞれに一家言を持っているものだ。スミレ学会があったり竹の植物園があったりすることがそれを物語っているといえるだろう。時には外来種が大好きという人もいるし、苔やシダ、きのこという花の無い隠花植物が大好きという人までいて誠に幅広い。山などでそんな人に出会うと嬉しくてならないということを46回の記事に書いた。また、実際に一緒に歩いてみると教えられることが多々ありこちらの知識不足を思い知らされたりするので良い勉強になる。

しかしヤナギが得意だという人にはなかなかお目にかからない。「ヤナギはだめです」という人にはよく出会うのであるが。だからぼく自身もヤナギについてはなかなか知識が広まって行かない。というのもヤナギは同定することが難しい。一部の種を除いては葉になってしまうとぼくなどにはほとんど見分けが付かなくなる。それにヤナギは交配して雑種をつくることが多いのだそうだ。それでも花はそれぞれ個性的なので同定をするのならこの時がチャンスであると思っている。しかしこれもまた意地がわるくヤナギというのは高くなる木が多いのでじっくり観察しようにも背が届かないということが多い。

シバヤナギ。これはありがたいことに咲いている場所がヤナギにしては特徴があるのでよく分かる。普通ヤナギというと河原など水っぽい場所に生えている。ところがこのシバヤナギは比較的乾いた崖の上や斜面に生えていることが多いので花時でなくても見分けることが出来る。特に崖で見つけた冬芽はすぐにそれと分かる。ご多分に漏れずぼくも「ヤナギはだめです」と言っている一人だがシバヤナギは冬芽時と花時はすぐ見分けることが出来る。写真のヤナギも斜面に生えていたので写真が撮りやすかったそれで背景が町になっている。

実は十年ほど前、同じ学校で非常勤講師として机を並べていた先生がその道(ヤナギ)の大家であったことがあった。しかしその時はまったく知らずに数年を過ごしてしまった経験があり返す返す残念な思いをしている。その時から「植物が好き」という人にはかならず「何が得意ですか」と聞くことにしている。ただしぼくが同じように聞かれても答えようがないので、そんな人に出会った時には聞き返されないように質問を湯水のように浴びせてちょっと嫌われてしまうこともある。我ながら情けない。

P-MAC 野外教育センター 石井英行