第48回「マルバウツギ」

《マルバウツギ ユキノシタ科》

「卯の花の匂う垣根に・・・」と歌にうたわれたウツギの仲間です。あちらは姿も少し優しい感じがしますが、こちらは花、葉、樹型ともにややごつい感じがします。

マルバウツギという名が付いているので文字どおり葉が円いのかと思いがちですが、写真でも分かるように決して円い訳ではありません。植物の中には「マルバ●●●●」という名の付けられた物が結構多いのですが、マルバウツギのように「いったいどこが円いんだよ」とつっこみを入れたくなるものが多々あります。ではなぜそのような名が付いているのでしょう。答えは簡単で同じ仲間の植物の葉っぱに鋸歯というギザギザが付いているのに対して、付いていないものを「マルバ●●●」と呼ぶことが多いようです。ところがです。もう一度写真を見ていただくと分かるのですが、このマルバウツギ、決してギザギザがないとは言えないのです。これまた不思議なことなのですが、というより曖昧なのですが他の種よりは多少ギザギザが少ない。だから「マルバ」です。というほか無いようです。命名なんて得てしてこんなもんですね。

ところで「ウツギ」という名の由来ですが、これは単純明快です。樹の中がうつろなのです。だから「空木」と漢字表現します。

ところがこの空木、もう一つ面倒な話しがあります。漢字表記をしますと「箱根空木・ハコネウツギ」「谷空木・タニウツギ」「二色空木・ニシキウツギ」などという名のスイカズラ科の一群の植物があるのです。花の形はまったく違いますので見慣れてくれば一目瞭然ですが、花に興味を持ち始めた人にとっては紛らわしいと思いませんか。しかもこのスイカズラ科の仲間は見分けるのになかなか手強い相手です。だから、スイカズラ科に比べたら、ずっとやさしく香りもいいし、特徴の覚えやすいユキノシタ科なのに、ウツギと聞くだけでアレルギー反応みたいにして覚えることを止めたりしてしまう人がいるのです。

写真は、江ノ島で撮りました。それまでは山の花だとばかり思っていたものですから海岸にあったので驚きましたが、よくみれば江ノ島もこんもりと山のように樹木の茂っているところですね。やはり海岸の植物とは言い難いようです。

P-MAC 野外教育センター 石井英行