第42回「ナガハシスミレ」

《ナガハシスミレ スミレ科》

俗称、テングスミレという。28回目のウルップソウでも取り上げた隔離分布をするスミレだ。ぼくの知る分布は新潟県を中心とする日本海側。そして栃木県の益子である。写真は益子の山で撮ったものだ。

ところでぼくは、ある日群馬県の山でこの花を見つけてしまった。低山で誰でも歩ける山だ。しかも最近ある有名な花を植えて人を呼び寄せている山で誰の目にも触れる場所にある。もともとニオイタチツボスミレが群生している処があって、毎年愛でるのを楽しみにしてしている山なのだが、今年はその場所に一つも見あたらなくなってしまった。驚いて周りを探してみたのだがやっぱりない。ガッカリしているときに見つけたのがナガハシスミレだった。しかしこんな処に有るはずがない。写真に撮ろう思ったのだがあいにくその日は風が強く写真どころではなかった。しかも少し離れた崖の下にあったので近づく事もできなかった。

疑問だらけで帰宅した後、スミレに詳しい人に聞いてみることにした。答えは「そこの場所での報告例はない。もし見つけたのだとしたら貴重な報告になります」とのことだった。ちょっと嬉しかった。だけど写真もないし一緒に居た人たちは「スミレはどんなものでもスミレでいいや。難しくて覚えられない」なんて言っている人たちだったので、承認になって貰えそうもない。次の春には風の穏やかな日に訪れて写真を撮ってきたい。ちゃんと咲いていてくれるかなあ。

テングスミレ。ナガハシスミレの名前の由来は距と呼ばれるしっぽのようなものが他のスミレに比べて異様に長いことから来ている。

P-MAC 野外教育センター 石井英行