第41回「ナガバノミヤマカラマツ」

《ナガバノミヤマカラマツ キンポウゲ科》

実はこの花ちょっと珍しい。普通の図鑑にはまず殆ど出ていない。名前の紹介はあるが写真で掲載されているのはごく希であると思う。また、ナガバカラマツという種があって北海道に希に産すると書いてある。こちらは葉にギザギザ(鋸歯)がほとんどないが、写真のものははっきりと認められる。しかもこの花に出会ったのは北海道ではない。南アルプスの山を縦走しての下山中に見つけたものだ。だからぼくはあえてナガバノミヤマカラマツと呼ぶ。普通のミヤマカラマツに比べると10cmも葉が長い。

山行中に珍しい花を見つけると、ぼくはあまり騒がないようにしている。「珍しいものです」と一応は言うようにしているが取り立てて解説などはしない。何故なら知れ渡ることが恐いからだ。仕事柄珍しい花の咲くところをたくさん知っている。毎年は訪れることが出来ないので何年かに一回愛でることが楽しみだが、時に無惨にも盗掘にあっていることがあるからだ。同行の人たちが盗っていったなどとは思わないが、何処かに伝わってしまったりするのが恐い。

毎年何処かでそんな花を見つけるのだが、有名は花の場合は知らん顔をすることもできないので辛い。解説をしないのは不信感をもたれかねない。今年は思いがけないところでトガクシソウという花好きには堪えられない花を見つけた。しかしこれを知らん顔を決め込む訳にはいかない。なにせ超有名は花なのだから。だから同行の人を呼んで解説に及ぶ。そして後日談。「友だちに話したらそんな処に咲くはずがないって言ってましたよ」「だからその人『誰かに盗られてはかわいそうだから今度行って盗ってこよう』っていってました」と報告してくれる人が現れた。アチャー!頭が痛い。しかしその花は入山者のための駐車場の脇にあったのだ。盗ってくれと言わんばかりだ。さあどうなっているでしょう。

P-MAC 野外教育センター 石井英行