第35回「アカシデ」

《アカシデ カバノキ科クマシデ属》

4月頃小さな山へ行って、山頂などから谷筋を眺めているとこの木に花が咲いているのが見える。サクラ、ツツジ以外で樹木の花を示して「●●●の花を見にゆきましょう」などと誘うことはほとんどない。アカシデも例外ではないが、いかがですか、綺麗でしょう。

ぼくはこの花ならば見にゆきましょうと誘っても良いのではないかと思うだ。一本で立っていることはなく必ず何本かが寄り添って小さな林をつくっているので満開の時はよく目立つ。同じシデの仲間とはまったく違って「アカ」とあるようになかなかハデな咲き方をするから見応えはあると思うのだが。 ぼくはこの花が好きで、春の山行で出会うと、とても嬉しい。お教えしましょう。アカシデの咲く一番好きな場所は筑波山の山頂から北へ下りる道だ。日本中どこへ行っても出会えるのでわざわざどこが良いか、などと場所を特定するのもナンセンスな話しなのだが、好きだからどうしてもよけいなことをする。

実は若い頃のちょっとした思い出があってその場所に拘っている。ぼくはその日、麓にあるユースホステル泊まりに行った。足下にはカタクリそして頭の上にはこのアカシデが咲いていて春の山道の美しさを堪能したのだ。実はこれ高校生の時の話し。なんとひねた高校生だと思われるかもしれない。普通、高校生は山の花なんか目もくれないで一目散に歩いているものだ。ハイそうなんです。ぼくもいつもはその様にしていました。でもその日はたまたま山頂で話しかけた人が同じユースホステルへ泊まるというので一緒になって歩いて来たのだ。そしてその人に教えて貰ったのがアカシデだった。カタクリも教えて貰ったんじゃあないかな。エエ!もちろん女性ですよ。

何かが好きになるかなんて所詮はこんなものです。名前も何も知らないその時に出会った一期一会の人だが、それだけがきっかけではないにしてもぼくはその後すっかり植物の虜になってしまったんだから不思議な出合いではある。

 

P-MAC 野外教育センター 石井英行