第33回「イヌガヤ」

《イヌガヤ イヌガヤ科》

イヌガヤ属の一属だけで日本にではこの他にハイイヌガヤがあるだけの小さな科だ。広葉樹林やスギやヒノキの植樹された林にも見ることが出来て、実は身近な木である。けれどもこんな風に花が咲くとなると殆どの人が知らないだろうと思う。写真は雄花で盛んに花粉を出している。

ぼくが「面白い花をみつけましたよ」というと「本当に花ですか」と疑う人が必ずいる。虫かそれとも虫の卵に見えるらしい。そんなときは少し近づいて貰って指で軽くはたいてみる。すると煙のようにして花粉が飛び散るので、ワッ!っといって皆さん後ずさりする。紛れもなく花である。それでも「卵だって粉が着いている場合だってあるんじゃあないですか」などと言って疑う人がいたのでルーペを持ち出して見て貰ったこともある。そうすると雄しべなども見え確かに花であることがわかる。

今年は特にこの花が目立ち500~600mの山へ入ると必ずと言っていいほどお目に掛かるので、何回か同じ様な解説をした。ここで失敗談。ある日この花を見つけて「イヌガヤです」といったあと前序のことなどを説明し始めたら何か違和感を感じた。喋っている内に昨日も同じ解説をしているはずなのに何かが違う。と思い始めた。その時は分からなかったのだが何か引っかかるものを感じていた。

そして数時間後、はたと思い当たった。昨日は花の名前を「イヌマキ」と言っていたのだ。木や葉はよく似ているがまったく違う種類の木だ。「イヌ」と言うところが共通点でつい「--マキ」と出たようだ。もう取り返しが着かない。昨日聞いた人のなかで熱心な人は後で図鑑かなにかを引いて「?」をたくさん付けた人が居ただろうなあ。

実は他の植物でも時々やる失敗だ。だけど喋っている内に違和感を感じて殆どの場合その日のうちに訂正するのだが。フィールドではこんなことも時々起こる。

 

P-MAC 野外教育センター 石井英行