第32回「ザゼンソウ」

《ザゼンソウ サトイモ科》

春を呼ぶ不思議な花、ザゼンソウ。実はこのザゼンソウ、自ら熱を発する事が知られている。だから外気温が氷点下になってもめげることなく咲き続けることができるのだそうだ。最高で22℃にもなるらしい。こうした花はまだまだあって、ハスの花はなんと32℃にまで上がるのだそうだ。もっともハスの方は花が開ききると終わってしまうので、これで暖をとろうなんてしても無駄だ。発熱植物という。

ものの本によれば、外気温によって熱が上がったり下がったりするサーモスタット付きの花もあるそうだから、ザゼンソウくらいの発熱で驚いていてはいけないのかもしれない。

そしてもう一つの不思議。この花、臭い。ちょっと表現出来ないくらい臭い。花の香りが人間にとって快いとは限らない例だ。仏炎包(暗赤色の部分)の中を覗いて見ると、テカテカと油で光った様な黒い虫が緑色の花粉をつけて動き回っている。あまり虫のことを好きではないのでじっくり観察したことはないのだが、山で見かける動物の糞のあたりにうろうろしている虫に似ている。おお嫌だ。

せっかく匂いを放つのであれば良い匂いにすればいいのにと思ってしまうが、ザゼンソウは蜂や蝶の活躍する時期よりずっと早く咲くので虫に頼らざるを得ないのだろう。だったらもっと遅くに咲けば、とも思うがその頃は他の花と競わなくてはならない。発熱までして、尚かつ蝶を呼ぶような姿をするのはそれだけエネルギーがいるだろう。なるべく省エネで子孫を残す。これが植物に与えられた使命でもあるのだから見事に全うしているのではないかな。何はともあれ他の花に先駆けて、早春にぼくたちを楽しませてくれる。それだけで十分だ。

 

P-MAC 野外教育センター 石井英行